前回の記事では、ISO 19650 は、Revit ユーザーの「業務のモヤモヤ」を解消するための共通ルールであり、難しい理論ではなく、「情報の扱い方をそろえるための考え方」だと説明しました。今回は、多くの Revit ユーザーが共通して感じている悩みについて考えてみます。それは、せっかく「Revit でモデルを作り、図面も作成しているのに、上司や関係者が BIM モデルをほとんど見ず、PDF 図面だけを見てチェックや修正指示を行っている」という問題です。
上司から「この線を直してください」や「この寸法を修正してください」という指示を受けながら、「その変更をすると、他の部分にも影響が出るのに…」と思ったことがある人はとても多いのではないでしょうか。
Revit でモデルを作るということは、単に 3D の形を描くわけではありません。床や壁、設備などが情報を持ちながらつながっており、ひとつを変更すると、関連する部分にも影響が出ます。しかし、PDF 図面だけを見ていると、そのつながりが見えません。その結果、修正の意図が十分に共有されず、手戻りや修正漏れが発生しやすくなります。
では、これは単純に「上司が BIM を理解していない」という問題なのでしょうか。実は、そうとも言い切れません。日本の建設業界では、長い間、紙図面や PDF 図面を中心に仕事が進められてきました。そのため、「モデルをどのように確認するのか」という作業のルール自体が、十分に整理されていないのです。
しかし、本来 Revit モデルには、図面以上の多くの情報があります。例えば壁の位置を設計変更をした場合、図面だけでは「壁を表す線の位置が変わった」ことしかわかりません。ですが、モデルを見れば、設計変更による変わった壁に対する、空間との干渉、設備との関係、数量への影響など、さまざまなことがわかります。
上司がモデルを見てチェックしてくれないという Revit ユーザーの悩み (ChatGPT で作成)
つまり、Revit の本当の価値は、「きれいな 3D モデルと図面を作ること」だけではなく、「必要な情報をみんなで共有できること」にあると言えます。ISO 19650 では、「必要な人が、必要な情報を使って判断できる状態を作ること」が重要だと考えています。
例えば、
- 干渉チェックは Revit のモデルを元に Forma のコラボレーションの機能を使って行う
- 寸法確認はモデルを見ながら Revit の中の図面で判断する
- 仕上げ情報はモデルに入れられている属性で確認する
といったように「誰が、何を使って、どのようにモデルから情報を確認・判断するか」を事前に決めておき、その役割を確実に果たす必要があります。ここで「上司や関係者まで Revit を完璧に操作できる必要はない」のです。必要なのは、高度なモデリング技術よりも、「どの情報を見ればよいか」をみんなで共有することなのです。これは上司や関係者が Revit のソフト自体を持っていなくても、クラウド ソリューションである、Forma Data Management (旧 Autodesk Docs) があればできることなのです。
こうした考え方が広がると、Revit ユーザーの感じていたモヤモヤも少しずつ変わっていきます。モデルを見る文化ができれば、修正の意図や変更の背景も共有しやすくなり、図面だけでは気づけなかった問題にも早く気づけるようになります。
特に重要なのは、これにより Revit のモデルの品質が高まるということです。もし図面しか必要とされなければ、図面に書き出されない部分の情報は、たとえ間違っていても問題ありません。しかし、モデルを関係者全員が見るようになれば、モデルに含まれているすべての情報を正しく持つ必要があります。これは、将来につながる情報資産としての価値として、とても重要なことです。
Revit は単なる「3D 図面作成ソフト」ではなく、「情報を共有し、みんなで判断するための道具」なのです。そして、せっかく作った Revit のモデルが本当に活きるのは、みんながその情報を使って判断し始めた時なのです。そこに、ISO 19650 という考え方の価値があります。
なお、ISO 19650 による情報マネジメントについて、より深く学びたい場合は、私が運営する Web サイト "BIM Innovation HUB" を参考にして頂ければと思います。
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