2023 State of Design and Make の解釈

2023 State of Design & Make.PNG

最近、「デザインと創造(Design & Make)」という言葉を耳にしませんか?そこで、オートデスクは Autodesk University 2023 を「デザインと創造(Design & Make)のカンファレンス」とすることにしました。 

 

今年初め、オートデスクは、調査研究の世界的リーダーである Ipsos 社の協力を得て、世界的な調査の成果として『2023 State of Design & Makeレポートを発表しました。このレポートの作成にあたり、世界中の建築、土木エンジニアリング、建設・施工業界製造業、メディア & エンターテインメント業界の 2,565 人のリーダーにアンケートを実施しました。オートデスクは、各業界で使用できるソフトウェアを作成しています。しかし今回は、利用しているソフトウェアについてではなく、テクノロジーが業界にどのような影響を与えるかについて調査しました。 

  

レポートを読んでみると、いくつかのトピックでは、私たちの周りの土木エンジニアリング業界で何が起きているかが書かれていました。最も共感したことを書き留め、自分自身で情報を消化してから、同僚にもレポートを読んでもらいたく、すぐに何人かの同僚にレポートを共有しました。この調査結果は、デザイナーの日常業務レベルではなく、大きな規模で変化していることを示しています。すなわち、業界全体がどのように変わっているのかがわかります。私に見えてきたことは、以下のとおりです。 

  

  

労働力の変化 

  

2023 State of Design & Makeレポートの中で、私が最も影響力があると感じた記述をひとつ挙げます。 

  

「回答者の 72% が、過去 25 年間よりもこの 3 年間で労働力が大きく変化したと答えました」 

  

何度も読んでわかっているのですが、もう一度振り返ってみましょう。私たちの世界は、特にテクノロジー業界において急速に進化しています。世界の変化についていくことを選ばず、傍観していれば、世界はただ通り過ぎていくだけでしょう。この 3 年間、世界的なパンデミックを始め、いくつかの要因が私たちの仕事に大きな影響を与えました。 このパンデミックは私たちの日常生活を変えてしまいました 

 

私たちはたちまち慣れ親しんだオフィスから追い出され、自宅に閉じ込められ、それまで普通だと考えていたすべてのものから切り離されました。一夜にしてオートデスクの IT 部門は、オフィスで作業しているときと同じ環境で、自宅で安全に作業できるようにする必要性に迫られ、慌てました。リモート ワークでは、コミュニケーションとコラボレーションにデジタル ツールを活用できることがよくわかりました。 

 

また、デスクの周りに集まって同僚と話し合うことができなくなりました。新たな作業環境は、共有の仮想画面で Autodesk Construction Cloud Design Collaboration 機能や Model Coordination 機能などを使用してモデルを共有することになりました。これは、パンデミック後のニューノーマル(新しい常態)となり、このような作業形態は今後も続くでしょう。 

  

ここ数年の変化は、オートデスクの作業環境に限ったことではありません。デザイナーがソフトウェアを利用する方法も絶えず進化しています。 2 次元モデルは現在も使用されていますが、3 次元モデリングに押され気味です。3 次元の製図を作成するツールは何年も前からあります。しかし、モデルを作成して共有する必要性は高まっています。クライアントや建設会社が、モデル化された設計を要求してくることが急速に増えています。さらに、建築家、機械、電気、給排水衛生設備、構造、および土木現場のデザイナーが作成するモデルはすべて、一貫してまとまっている必要があります。 

 

私たちデザイナーとしては、常にソフトウェアにより多くの機能を追加するように働きかけています。ソフトウェアはニーズに合わせて進化し続けています。デザイナーが 2000 年代前半と同じような方法でソフトウェアを使用し続けるとしたら、業界の要求に応えることは難しいでしょう。世界は急速に発展し、変化していますが、私たちは遅れずについていくために、新しいソフトウェアやツールを習得する必要があります。 

 

生産量を左右する中核となるテクノロジーを活用する職務を担う場合は、変化を受け入れ、継続的に学習する必要があります。 エンジニアリング業界は停滞することなく、より良い技術を目指して絶えず進化を続ける業界です。 

  

  

採用と定着  

  

「あらゆる業界のビジネス リーダーや専門家は、優秀な人材を引き付け、離職を防ぐことこそが、何よりも優先すべき課題であると認識しています」  

  

大量離職時代という言葉を聞いたことはありませんか?Wikipedia によれば、大量離職とは従業員が自発的に仕事を辞めるという経済動向です。 この流行は、パンデミックの影響が重くのしかかり始めた 2021 年初頭に始まりました。最もよく挙げられる退職理由は、物価の上昇に伴う賃金の伸び悩み、キャリアアップの機会の制限、柔軟性のないリモート ワークの方針、福利厚生です。  

 

従業員は自らの優先順位を受け入れてくれる雇用主を求めて、次々と勤務先を変えています。自宅で問題なく仕事ができることがわかった従業員は、リモート ワークやハイブリッド ワークを手放すことに消極的です。そのため、リモート ワークやハイブリッド ワークを取り入れている雇用主を求めています。従業員の入れ替わりが激しくなり、企業は優秀な人材の確保と定着に向けたアプローチを見直す必要に迫られています。 

  

同僚が退職したときに何か影響を感じたことはありませんか?残念なことですが、社員がひとり退職すると、ドミノ効果で次々と退職者が増えることがよくあります。チームの同僚が退職しても、退職した同僚の穴を埋め、製品を完成させて納品し続ける必要があります。そのため、残されたチームは、要求される生産性を維持するために、余分に仕事を引き受け、多くの場合は残業することになります。欠員を埋めることができなければ、チームは燃え尽き症候群の影響を感じ始めるでしょう。燃え尽き症候群の影響が出始めると、残された人たちも転職に向けて動き始めます。数週間から数ヵ月にかけて欠員を埋められないままになると、悪循環を断ち切ることは難しくなります。 

  

そこで、志望者はどこにいるのかという疑問が生じます。私は不況のときに大学を卒業したので、専門分野での就職は困難でした。就職説明会に参加したところ、「(企業は)存在感を示すために参加しているが、採用はしていない」と言われました。大変な就職難で、自分の専門分野の仕事を見つけるのに必死でした。 

 

しかし、確実に時代は変わりました。今では LinkedIn にサイン インするたびに、私のフィードは応募可能な求職情報の投稿で埋め尽くされているように見えます。業界の需要に応えるために、職務が増えているのでしょうか?それとも、より安定した仕事に就くために離職しているのでしょうか? 

  

採用と定着の問題では、非常に多くの課題があります。さまざまな方法で解釈することはできますが、多くの場合は他の領域の問題にもつながります。たとえば、ある職種を募集すると、その職務をこなすために必要なトレーニングを受けていなかったり、スキルのない人が応募してきたりすることがあります。これは、デザインと創造(Design & Make)の次の話につながります。 

  

  

スキルアップとトレーニング 

  

「回答者の半数以上が、職務に必要なスキルを持っていない従業員を雇用しており、トレーニングする計画があると答えました」 

  

採用と定着を進める中、雇用主は必要な職務をまっとうするために必要なスキルと知識を持つ志望者を探すことに苦労しています。デジタル トランスフォーメーションは、企業の在り方を急速に変化させています。従業員にとってソフトウェアのスキルは、もはやセールス ポイントにはなりません。それは「必須」なのです。クライアントや選定する代理店も、モデルとその機能を認識しているため、いわば誰もがデジタル トレインに飛び乗る準備ができています。 

 

企業は提出物としてモデルを必要としているため、2 次元形式の図面は、もはやオプションではありません。残念ながら、これらのスキルを持つ志望者を探すことは難しいです。 

 

すべての大学はまだデジタル ソフトウェアをカリキュラムに完全には組み込んでいません。設計に必要なソフトウェアを開いたことさえない卒業生もいます。新入社員の教育とトレーニングは、雇う側の企業に任されるようになりました。 これについては、オートデスク コミュニティでも白熱した議論が交わされています。どこまでもソフトウェアを愛する人たちです。私が知っている Expert Elite* の多くは、職場でのソフトウェア リテラシーの知識格差について徹底的に議論していることでしょう 

* 製品の使い方や専門知識を他のユーザと共有することで、オートデスク コミュニティに大きく貢献し、オートデスクが Expert Elite として認定しているユーザ 

 

大学の教育制度は、研究に進む道と就職の間に深い溝があります。新世代の学生を教える教授の中には、社会経験のない人もいます。 学士号取得後の道は明確に 2 つに分かれ、修士号の取得後にさらに博士号を取得するか、企業に就職するかのどちらかです。 

 

多くの場合、博士号の取得を目指す目的は教授になることであり、自分が情熱を傾けている科目を学生に教えるためです。このレベルまで教育を追求する人たちを尊敬しますが、社会経験を積めず、実社会とは隔たりができてしまいます。大学を卒業して就職する人のほとんどは、今までに経験したことのない仕事を任され、仕事をこなすために必要なスキルや知識を雇用主から教えてもらうことになります。 

 

教育機関のカリキュラムは、急速に変化する労働環境に追い付いていません。 設計や解析用の何らかのソフトウェアを導入し始めた大学もありますが、たいていは補足的に使用するに過ぎません新卒者の役割や職務は、学問的知識とソフトウェアのスキルを混ぜ合わせた、これまでにないほどのハイブリッドなものになっています。 

 

製図者とエンジニアの役割は別々ではなく、設計者として融合されています。基礎を教えられていない、必須の基本スキルもない新卒者に、Revit、AutoCAD、Civil 3D を使わせていますが、そのうちモデルとプラン一式を作成できるようになることを期待しています。私たちが求める教育そのものが、学生に重要な必須のスキルを習得させていないのに、新入社員が仕事に必要なスキルを身に付けることを期待できるでしょうか? 

  

スキルアップは大学を卒業したばかりの従業員に限ったことではありません。多くの従業員は、いつもの仕事のやり方に安住しています。恐らくこの状態に対抗することが最も困難でしょう。人は慣れ親しんだ習慣を身に付けると、断ち切ることが難しく、変化に躊躇するようになります。 

 

これまでに説明したように設計業界は絶えず進化しており、私たちは変化を受け入れ、進化するテクノロジーを活用して前進していかなければなりません。しかし、教える側に知識がまったく備わっていないと実現することはできません。これは制度的な問題になるかもしれません。企業は他に選択肢がないため、現在の従業員のスキルを磨き、質の高い製品を生み出すために必要なスキルを教える方法を模索しています。 

  

  

デジタル成熟度 

  

2023 State of Design & Makeレポートでは、デジタル成熟度と、変化に対する企業の対応力についても書かれています同レポートでは、デジタル成熟度とは企業のデジタル トランスフォーメーションの状態と定義されています。デジタル トランスフォーメーションの初期段階にある組織は、デジタル成熟度が低いと見なされます。これに対して、デジタル トランスフォーメーションの目標に近づいている、または達成した組織は、デジタル成熟度が高いと見なされます。 

  

「デジタル成熟度が高い企業の回答者は、デジタル成熟度が低い企業よりも高い割合で、変化に対応する準備ができていると報告されています」 

  

企業はデジタル成熟度の達成に至るまでに、さまざまな障害を克服する必要があります。大企業は、中小企業に比べてマイナス コストを容易に埋め合わせることができるため、新しいテクノロジーの導入に伴うリスクを乗り越えることができます。デジタル成熟度の向上に伴うコストは無視できません。

 

新しいソフトウェア、ハードウェア、ツールを購入する際にもリスクの検討が必要です。新しいテクノロジーの導入にはトレーニングを要します 

 

トレーニングは、習得したことが生産性と効率性の向上につながることを期待して、従業員を生産現場から離すことを意味します。テクノロジーが効果を発揮しない場合や、徐々に廃止することになった場合、このリスクは失敗と見なされる可能性があります。この失敗を吸収することが、デジタル成熟度の向上をはかる上で困難な課題となり、将来的にテクノロジーの導入から遠ざかる可能性があります。しかし、技術投資がうまくいけば、利益率が上昇する可能性があります。 

  

デジタル成熟度は、リモート ワークを受け入れる企業の度量にも関係しています。デジタル成熟度の高い企業の回答者は、人材関連のさまざまなデジタル ソリューションを導入していると回答しています。広い地域から採用することで、新しいスキルを取り入れることができ、学習プログラムは、動画配信や AI を使ったソフトウェアを活用することで実施できます。 

  

調査によると、2019 年、2020 年、2021 年にはデジタル化を進めた企業の数が、同活動を進めなかった企業の数を上回りました。デジタル成熟度によるパフォーマンスの差は拡大しているようです。 この傾向が続くと、デジタル化が遅れている企業がその差を埋めることは困難になるでしょう。 

  

  

まとめ 

  

2023 State of Design & Make』レポートでは、デジタル トランスフォーメーションの重要性と、テクノロジーがビジネス経済、人材獲得、持続可能性に与える影響について取り上げています。貴重な情報が豊富に含まれているので、レポート全体を読むことをお勧めします。取り上げている話題は、オートデスク ソフトウェアを使用する誰もが共感を覚えるはずです。私たちの世界は日々テクノロジーに依存しており、変化を受け入れ、前進し続けるしかありません。 

  

2023 State of Design & Make』についてご意見やご感想がありましたら、コメントしてください。また、Autodesk University 2023 に参加登録し、業界のトレンドについて学ぶこともできます 

 

Autodesk University 2023 に現地で参加すると会場でイノベーターやリーダーと交流することができます。また、Expo エリアに立ち寄り、企業ブースで最新の製品やテクノロジーに接することができる機会も準備しています参加希望の方は、Autodesk University 2023 公式 Web サイトで登録することができます米国・ラスベガスでお会いしましょう! 

 


 

本記事は、2023 年 8 月 10 日に英語版 Community Blog に掲載された原稿を翻訳したものです。