■ 製造ワークスペース "CAM" とは何をする機能か
CAM (Computer-Aided Manufacturing) とは、工作機械の加工プログラムを作成するための機能です。設備さえあれば Autodesk Fusion でモデリングしたデータを現実で作ることができます。
本格的な金属加工を行う場合は数百万円の設備が必要ですが、趣味で家具や小物を作る用途であれば、20 万円程度から始めることができます。
CAM には一般に同時に動かす軸の数に応じて 2 軸、3 軸...といった分けられ方をしています。細かくは 2.5 軸や 3+1 軸など中間の区分がありますが、大まかには下図のように軸数が増えるほど複雑な形状を加工することができるようになります。
■ 各種ライセンスの機能差
個人用 Autodesk Fusion |
商用 Autodesk Fusion |
Autodesk Fusion Manufacturing Extension
|
2 軸、3 軸加工 | 2 軸、3 軸加工 | |
旋盤 |
旋盤 | |
3+2 軸割り出し加工 | ||
自動工具交換 (ATC) 対応 | ||
早送り動作 | ||
同時 4 軸、5 軸加工 | ||
バリ取り | ||
プローブ検査 | ||
ツールパス編集 |
CAM 機能はライセンス種類にかかわらず、全てのユーザーが使用可能です。同時 5 軸やプローブといったより専門的な製造業向けの機能は、追加の拡張機能(マニュファクチャリング エクステンション)として有償で提供されています。
個人用ライセンスでは自動工具交換 (ATC) に対応した G コードを出せず、早送りも制限されるため、高価な工作機械やマシニングセンターを活用するには商用ライセンスの契約を推奨します。
しかし、個人が趣味で使う卓上 CNC フライスや自作 CNC を動かすには、個人用 Fusion でも十分な機能を備えています。
■ Fusion の CAM はちゃんとしたものなのか?
マシニングセンターを動かすのに十分な機能を備えた CAM 機能を年間 10 万円程度で使えると聞くと、製造業の方は安すぎて不安になるかもしれません。
Fusion に搭載されている CAM 機能は、元々は SolidWorks 用の CAM アドインだった HSMWorks がベースとなっています。Autodesk は、2012 年に HSMWorks 社を買収しています。
買収前は年間保守費用だけでも今の Autodesk Fusion のライセンス料よりも高いソフトウェアでしたが、現在も同 CAM 機能の開発は継続されており、日々使いやすくアップデートされています。
CAM 機能目当てで使い始める方がいるほど、非常に高性能な CAM が Fusion には搭載されています。
■ 個人的な経験による Autodesk Fusion を採用するメリット
私は趣味で Fusion を使ったものづくりをしています。Fusion を選ぶメリットは以下です。
- CAD の形状変更に CAM 側も追従してくれる
ひとつのソフトウェア内で CAD と CAM が共存しているため、加工データを作りながら「この形は加工しにくいから変えよう」といった修正がスムーズに行えます。また、一度 CAM 機能でツールパスを作った後に形状変更を行った場合も再計算ボタンひとつでツールパスが修正されます。
- クラウドベースなので、加工用の PC とのデータ共有が容易
自室と加工室の PC に Fusion をインストールすることができ、どちらの PC でも CAD と CAM の操作を行うことができます。また、クラウドベースなのでデータを保存した USB メモリを持って部屋を行ったり来たりせずにその場で修正ができます。修正した情報は PC 間で共有されるため、変更漏れもありません。
- ユーザーが多く、コミュニティが活発
Fusion は非常にコミュニティが活発です。ソーシャル メディアやフォーラムをはじめとするコミュニティで CAM の質問を日本語ですることのできるソフトウェアは非常に稀有です。これから CAM 機能を触ってみるという方にはうってつけの環境が整っています。
5 軸加工はこのブログ記事を書くために初めて触れましたが、コミュニティで教えてもらって動かすことができました。
■ 加工までの大まかな流れとライブラリの準備
具体的な操作は今後の記事で詳しく説明していきますが、大まかな流れは上図のようになっており、
- セットアップでは材料のサイズの設定と、加工するときの座標系と原点の設定を行います。
- ツールパスの作成では形状に応じて工具の加工経路を作成します。工具の直径を指定していれば Fusion が自動的に形状を削り出すための経路を計算してくれます。
- ポスト処理では Fusion で作ったデータを実際に工作機械で動かすためのデータに変換して出力します。
実際に加工できるデータを作るには、手元にある工具と工作機械の情報を使用する必要があります。Fusion の中に標準ライブラリとして、ある程度のデータは用意されていますが、実用の際には工具とポストのデータを用意しておく必要があります。
工具の追加の仕方
[管理] の中の [工具ライブラリ] をクリックすると工具ライブラリのウィンドウが表示されます。
ローカルもしくはクラウドを右クリックすると、新しいフォルダを作ることができるので、自分用のフォルダを作って名前を付けます。
画面上部の [+] ボタンを押すと、工具の形状、直径、長さなどを入力して工具を登録することができます。手元の工具を登録して、加工やシミュレーションに使えるようにしておきましょう。
ポストの追加方法
[管理] の中の [ポスト ライブラリ] をクリックすると、ポスト ライブラリのウィンドウが表示されます。Fusion ライブラリから使いたいポストを右クリックしてコピー、ローカルに貼り付けをします。
もしくはローカルの中でインポート ボタンから自分で編集したものやダウンロードしたポスト ファイルを登録することができます。ポスト ファイルはメーカーが推奨のものを配布している場合もあります。
次の記事「CAM #1 - 2D CAM で板の切り出しをやってみよう 」では、2D 加工機能の使い方と実際に加工するまでの手順を紹介します。
また Fusion Japan の YouTube 公式チャンネルで「Fusion CAM 道場!」 と題して CAM 機能の紹介シリーズ動画がアップされています。日本語で CAM 機能の簡単な解説を視聴することができますので、興味のある方はぜひこちらもご覧ください。
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